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構造のリフォーム

やっと物件が見つかり、無数の捺印と署名を経て無事に購入。お楽しみはここから。
建物の基本性能を上げ、新築のショールームでは見つからなかった、僕好みの家に仕上げていきます。

この家は10年ほど前にもリフォームが入っています。外壁のモルタルの上に金属サイディングが被せられ、水周りを一新、どこででも見かける合板のフローリングが敷かれています。でも耐震強度には配慮されなかったようで躯体構造は40年前のまま、断熱も粗末。
金の使い方分かってねーなー、と思う一方でお風呂がバリアフリーのユニットバスになっていたのはラッキーでした。僕は風呂嫌いで一年中シャワーのみ。将来考えてバリアフリー化が必要なのは分かってますが、どうにもお風呂にかける金がもったいなくて。


耐震補強工事は具体的には痛んでいる躯体の補修に加えて、筋交いと火打ちの追加とホールダウン金物設置という事になります。webで探すと、耐震強度計算が出来るソフトが色々見つかります。ダウンロードしてちくちく入力してみると・・・やはりお話になりません。ただ、シンプルな形状が幸いして偏芯少な目でしたし、ソフト上で壁力上げてみるととりあえず倒れないレベルにはなりました。

まずはリフォーム業者さん探し。
ちょうど不動産売買の商談がまとまった日に、実家の近所のホテルで大手リフォーム会社が展示会やっていたのでお邪魔してみました。骨格部分以外すべてやりかえて新築状態にするのを商売としているみたいで、うちが考えてるのだとちょっと地味な仕事にはなりますが、見積もりあげてくれることに。

依頼したのは、
壁力アップ→内壁ほとんど撤去、筋交入れて戻し
一部天井抜きで躯体見せ
断熱材入れ替え
です。 仕上げ作業は僕の楽しみですから頼んでいません。
床以外の構造を内側からほとんど破壊することになりますので、それなりの出費は覚悟してました→一発目、ざっくり計算で500万くらいでした。さらに現地でこまごまと要求伝えて引き算足し算して、2度目の見積もりを依頼。
1週間ほどして二度目の見積もり到着→450万。前回より打ち合わせが細かい分、見積もりも細かく上がってきて、どの工程が幾ら掛かるかはっきり分かるようになってます。この見積もりの明快さも中古住宅購入のメリットだと思います、新築だと○○工事一式とか付帯費用一式、事務費といった謎の見積もりが出来てきます。何が起きるか分からない注文住宅新築で損しないためには仕方ないのでしょうね。ローンの額は最初に決まってますから、追加で料金が発生しても施主は払えないですから。はじめに余裕持って組み込んでおかないと。 でもこれからは豊栄建設みたいなワンプライスからの±が主流になっていくでしょうね。車と一緒です。

さて、大手リフォーム会社の見積もり見ながら感じたこと。
色々本を読んだおかげで、自分で全部出来るんじゃないかな?って位、それぞれの作業のイメージを具体的に持ってます。この材をこの工具でこう刻んで、と。実際出来るかどうかは別問題ですが(笑)、見積もりが高いor相応かってのは感じられます。
んでどの項目見てもいちいち高いですね。やっぱり。自社で職人抱えてるわけじゃないので中間マージン取って外注するわけです。大手リフォーム会社の社員の給料と宣伝費(僕が行った、ホテルでの展示会みたいな)が乗っかってくるわけです。それでもここに頼むメリットとしては、僕の代わりに大工と折衝できる人材を雇えること。

ところがです。ここの営業マン(建築士です)、大工に現場見せた後に「松崎さんの考えだとこういう問題があります」をずらりと並べてくれたのでした。そんなの大工に見せなくても分かってるんです。
そして外注先の大工が定型的じゃない収まり悪い仕事嫌うのは当然、それ何とかするのがあなたの仕事。大工の意見聞いてきて報告するだけのあなたを雇う意味無いです。
僕が直接大工さんと話しますって。

と、非情にお伝えしたら縁が切れました。
弟keigoの仕事は建築と関係するので、誰かいない?って相談してみました。「言われたことやるだけで良いなら腕の良い大工は何人か知り合いいるよ」との事。その中から自分も仕事で付き合おうと思ってる、半田さんって方に話してみるよと。
半田リフォームという、一人親方の会社。自社のwebも無いです。
前述の依頼内容に加えて、以下のようなメールをkeigoに送っておきました。
メールの内容そのままなので非常に読みづらいですが臨場感をどうぞ(笑)。


現在の見積もりと異なる点を列記していきます
下から行きます
床下 断熱材全部屋(玄関も)施工、スタイロフォームなどの化学発泡系断熱材使用
    隙間は現場発泡のウレタンフォームスプレーなどで塞いで
    断熱材は床下から施工可能なのか、床をはがさないとできないのか、確認して

床材 杉板の古材、5mm厚を使用、施主支給かつ施主施工、8月のお盆休みにやりたい
    下地は既存フローリングをそのままとし、上に重ねて貼ります
    敷居の高さが5mm以上あることを確認してください

壁  基本的に全部屋漆喰仕上げとします、漆喰の調達、施工とも施主
    台所も漆喰とします、玄関の北側・東側の壁はシナ合板でも良いかも?
    トイレも漆喰
    ですので、既存の壁で壊さない部分は現状のままでOK、壁紙もそのままでOK
    筋交いを入れる壁は、石膏ボードを貼って仕上げ無しでOK
    リビングと和室の間の壁、耐力壁だったか確認、取り除けるなら無くし、
     出入り口もしくは、両方から使えるクローゼットとしても良いかも?
    壁の断熱は床下断熱同様、発泡系としてください
    玄関と和室・リビング・トイレの壁の断熱を考えています、グラスウールで良いので
     断熱材を入れた方が良いかな?大工さんの意見お願いします

天井 基本的に全部屋既存天井撤去します
1階  リビング天井 断熱無し、2階床下が見える状態で仕上げとする
    躯体表面の仕上げ無し、現状のままでOK
     壁の高さあがります、その分のボードも必要
     壁をボード仕上げする際、2階床組みとの取り合いの加工大変かも
    和室天井 同様に断熱無し、梁が見える状態で仕上げとする
    押し入れ上の処理をどうするか、大工さんからアイディア出してほしい
     無造作でも良いかと思っておりますが?
    台所天井、既存天井を撤去し、勾配天井とする
     天井板はシナ合板を希望、仕上げ無し
     断熱はセルロースファイバー吹き込み
     垂木厚み分で断熱取れるか確認してください、CFなら通気層無しでも大丈夫?
    玄関天井、台所天井に準じます
    トイレ天井、既存同様の高さとする、お風呂の上もそのまま(ユニットバスだし)
     台所〜玄関にできる天井との間をどう処理するか?アイディアください
     無造作としてただの空間としても良いかと思いますが?
     トイレ床、クッションフロアとなってますがこちらも杉板古材張りたいです

水周り
 既存の洗面台撤去、できるだけ小さな洗面台をつけたいと思います
  位置を変更し、風呂側の壁につけたいです、予算的に難しければ洗面台無しでも可

リビング〜台所間にある現状の垂壁をどうするか、そのまま/撤去?
 実際に見てみないとわからないですね、料理の際の煙/匂いの仕舞い考えると
 そのままが良さそうですが?
また、リビング/台所で天井高さに違いができます(台所側のが高い)、
 この差異分にできるの壁に断熱を入れる必要があるかどうか?
 大工さんの意見を聞きたいです

その他
玄関の下駄箱撤去→和室押入れの奥行きを半分とし、玄関側から使えるように
    筋交いが邪魔になるかと思います、可能なら筋交い位置を変更
    変更できない場合でもできるだけこの案を採用したい
    既存の下駄箱の位置に自転車を2台吊るしたいため

2階行きます
階段はそのままでOK

どちらの部屋も、台所〜玄関同様、既存天井撤去、勾配天井とする
 天井板はシナ合板を希望、仕上げ無し
 断熱はセルローズファイバー吹き込み
階段部分の天井と壁をどうするか?大工さんのアイディアお願いします
 せっかく空間に広がりができるので工夫したいのですが、冬場の暖房を考えると
 難しいところです、取り外せる仕切りとか?

1階同様の壁、床仕上げとします
敷居の高さ、5mmあるかどうか確認ください
天井が上がる分の断熱材、ボード、見込んでおいてください
押入れ上の処理どうするか?こちらもアイディアお願いします
 将来的に広いほうの壁際の物入れに梯子掛けて、梁の上に合板貼って
 ロフト風にするのも面白いかもと思っていたりしますが?(これは現実味薄いかな)

梁が見えた状態となるので、天井電気配線は後からでも施工できるかと思いますが
 どうでしょうか?
 躯体が見えた状態でゆっくりと位置を考えてライティング等を検討したいのですが?



全天井撤去や収納の造作等を依頼してる一方、ライティングダクトを廃止するなど値下げ要因もちょっとだけあります。さていくらになるか?
→出てきた見積もりは250万。ただし内断熱で発泡系ボードを使うと、手間が大変なことになって価格が跳ね上がるためグラスウールに変更。それでもなんと200万安くなりました、これでちゃんと利益取れるんですね。
テレビcm等に金掛けてる建築関係業者は一切使う気無くなったです。
腕が良ければ時間が削減できる=人件費が下げられるんだなと実感。こういう大工さんは多分たくさんいて、自社の宣伝は上手じゃなくて普段は黙々と下請け作業こなしてる事が多いんだろうなと。まっすぐ職人さんにお金払いたいです。
keigoのおかげで直で仕事頼めたのはほんとラッキーでした。

ちなみに、半田さんが僕からの依頼見て一発目の感想。
めんどくせぇ・・・

大工さんとして当然な反応だと思います。しゃーないやるかで仕事として受けて、やりだしたらやりすぎてくれるのが職人さん。受けてくれて良かった。
ただちょっと気になるのがその「めんどくせぇ」分の手間分がちゃんと見込まれた金額なのか、なのですが。壁ひとつとっても梁の形に切り欠いたボードが必要。天井がある家のように四角いボード貼って終わりにはできない分、時間が掛かり工賃が増えるはずなんですけど。
ちょっと安すぎやしないでしょうか。


さて、ビフォーアフター開始です。
僕のコダワリの一つが天井落とし。
当初は予算の都合でリビングと寝室のみ天井撤去する予定だったのですが、壁や床と違って、住んでしまって後から天井をいじるのは難しいため全天井撤去することに。
これはキッチンの天井。キッチンの上は屋根(一部二階建てなので)のため、太い梁はなく天井を支えるための細い材があるのみ。屋根の下地の野地板が杉の無垢板で、年月を経て飴色になっていてめちゃめちゃカッコイイのですが、断熱が必要なので残念ながら今しか見れない景色。
# 写真は全てkeigoが仕事の合間に現場に行って撮ってくれたもの。照明が無い現場なのでピンボケはご容赦を。


こちらは1階和室の天井を剥いだ所。太い梁と根太、やはり杉板の床下地材が見えます。
こちらもめちゃくちゃカッコイイ、こちらの上には2階寝室がありますので断熱は入れないため、基本的にこれがそのまま1階の天井の仕上げとなります。


リビングの天井とリビング階段を見ています。
リビング階段は蹴込み無しのスッキリ仕様。このセンスはナイス。それにしてもごつい梁がカッコイイ。これを見たkeigoがくれた電話の第一声
「なまらマブイ」
僕にとって最高に嬉しい賛辞。
家の褒め言葉って立派とか、綺麗とかが普通。マブイってまず言わない。壁紙の汚れなんて、この景色の前では全く気にならなくなります。


この家を建てた人は本が好きな人だったらしく、リビングの一面に作り付けの本棚がありました。柱の下に基礎が入っており、どれだけ荷重が掛かっても平気。
この本棚もとても気に入っています。ずらりと酒瓶を並べるつもりなのです(笑)。
天井を抜いたので2階床下との間に中途半端に隙間が出来ました。壁と断熱を足すのはもちろん、デザイン的にも再考が必要な部分となります。


2階床下地=1階天井。
左側は過去の修理で作り変えられており、根太の太さが上がってさらに格子状の床受けが出来ています。床下地板は無垢板から合板に変更されています。こうした改修の歴史がわかるのもリフォームの面白さですね。
ただ、この新しい床も含めてどの床もレベルが狂っていました。
よく映画でビー玉転がるシーンがあります、あれRCだと大問題(=基礎が傾いたということなので)ですが木造だと普通にありえますし、問題なく修正出来ます。うちも基礎(配筋無しの布)はひび割れ無しで問題無しでしたが、床は1階2階それぞれ最大2センチ狂ってました。材がしなって狂ってるわけですね。
このレベル出し(水平出し)が幾ら掛かるのか聞いてみたところ、1階50万、2階30万。根太ピッチも当時と今では基準が違っています。残念ながら40年経った古材の味わいは失われますが、根太をやりかえて高さを修正し、根太ピッチも狭くして床強度も上げてもらうことになりました。


こちらは2階の天井。上には屋根しかないので天井を抜くとそのままストレートに屋根裏構造が見えます。
こちらも年月が染み付いた垂木や杉無垢の野地板ががよだれ出るほどカッコイイ。
# 冬場の写真で軒にツララが出来ていたのが気になっていたのですが、やはり屋根裏の断熱に欠けてる部分がたくさんあり、ひどい状態でした。おそらく雨漏りの修理の際に手を抜かれたのでしょうね。


元々は古い建物らしく低く圧迫感のあった天井高。
一気に天井が上がりますので、印象はガラリと変わります。
空いた隙間をどう仕舞いをつけて空間を見せていくのか。


2階押入れ下。床のレベル出しをすると建具の縦方向長さが変わるため、このふすまは使えなくなります。収納だらけの家が嫌いなため基本的に無造作でスペースとなる方向です。


これ、寝室になる予定の2階のお部屋。この収納の奥にリビングから続く階段があります。ここも天井を全落とししているので大きなスペースが出来ます。これをどうするのか。これも楽しみの一つです。
しかしマブイ。マジでマブイ。
こういう家のほとんどが取り壊されるのを前提として売り出されてるなんて。ほんともったいない。


寝室になる予定の部屋は二つに区切られており、リビング階段から入った所が板張り、奥は畳となっています。まるで旅館の部屋みたい、窓から庭の桜が見えます。
もちろん陳腐な床材と仕切りのガラスは変更します。


これ、玄関です。
玄関の上も2階が無く屋根のためこの天高。


同じく玄関。断熱入れますが勾配天井で仕上げる予定。
玄関は他の部屋と区切って断熱を入れます。
大きな玄関扉がありますのでどうしても熱逃げと結露の問題が出てきます、グラスウールでいいので内壁にも断熱するつもり。


リビング天井完成。既存の梁に新しい材を添えてレベル調整してます。
天井板は貼らないのでこれで仕上げ。火の元がある1階の天井でこれが出来るのは建築確認が必要ないリフォームならでは。
新しい材も無垢です。集成材は使いません。
集成材でも30〜40年は持つんでしょうけどね。抱かせた材の色が大きく異なるので仕上げが必要です。


リビングの掃き出し窓、掃き出し窓は寒いから嫌いなのですが、将来的に車椅子生活となった場合、スロープをつけてここから出入りできるメリットはあります。
床もレベルを出した上で下地まで完成、後でこの上に僕が自分で床材を貼ります。画像無いですが、大引きや土台の材も健康な状態でした。購入前に床下は覗いてはいたものの、ちゃんと確認できて一安心。


一階和室の元押入れ。
半分にスライスして、玄関との境に断熱材を入れました。隙間無く隅々まで入ってるのが大事。
押入れをスライスした残りのスペースは玄関側から使って下駄箱にする予定、元々のフツーな下駄箱は捨ててもらいました。。


リビングと台所の間仕切壁。ここは構造上も重要な壁で、X形に筋交いが入っています。たったこれだけで耐震強度が大きく変わるんですから面白いです、車のロールバーと一緒です。


この家の躯体で腐っていたのは2箇所。
リビングの掃き出し窓の下を受ける材が腐っていました。おそらく結露ですね。入れ替えてもらいました。
もう一つがこの柱(画像左側)。柱が真っ二つになっており、半分は力が出ていない状態。入れ替えるのが最良の修理ですが、コストが半端ないため、割れて意味無しになってる部分を外し、同じ形に作った材を抱かせて接着剤で固定。つまりここだけ集成材と同じ耐用年数となります。我が家のアキレス腱ですね。

半田さんの会社
 半田リフォーム
 電話番号:011-883-0082
 住所:札幌市清田区北野6条4丁目2番50号





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