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デュアルリリーフバルブ 2

リリーフバルブについて、さらに考察を進めます。

まず、VW純正のスプリングを取ってみました。EG-185E VW純正(GENUINE) オイルプレッシャーリリーフバルブ スプリング ロングG-185F VW純正(GENUINE) オイルプレッシャーリリーフバルブ スプリング ショートです。


油圧コントロール用。左の銀色のが元々入ってた奴で、右の黒いのが今回取った方。
油圧はもうちょっと上げたいので、レートが高いと嬉しいのですが・・・。見た目は純正の黒いやつのが短く、やや細く、巻数が少なく見えます。
微妙ですね・・・。


オイルクーラーコントロール用。こちらも右の黒いのが新しく取った純正。
こちらは逆に純正のが長いです。


んで測定してみますと。縦軸が各スプリングの長さ。横軸がその時の体重計が示した値。色がけしてあるエリアは各バルブが開いている間のスプリングの長さを示しております。

黄色いのが油圧コントロール用の純正スプリング。こいつをそのまま使ったらリリーフバルブが1.4kgf/cm~2で開き出してしまう計算(下の表参照)。元のは3.4kgf/cm~2でしたから話にならない。
ただ、巻数が少ないのが幸いしてコイルバインドすることなく全開口できます。イニシャル上げて使うタイプなのか?いやいや、元々入ってた方と同じところまでレート上げるとなると10mmほどもイニシャル掛けないとダメ、そこからコイルバインドまでは数ミリしかない。
ゴミですな、こいつは。

一方でオイルクーラーコントロール用はどうかというと。
こちらも純正のがレートが低く、4.7kgf/cm~2でリリーフ開始します。元のだと6.3kgf/cm~2でリリーフ開始なので、かなり油圧が高い状況じゃないとオイルクーラーをバイパスしてくれません。こちらは純正を使うのが良いかも。

基本的に3.4kgf/cm~2以上ならリリーフバルブが開き、それ以上油圧が上がらないようにコントロールされます。リリーフバルブでオイルをパンに返しきれず、さらに油圧が上昇するような状況、つまり冷間時においては4.7kgf/cm~2以上ならオイルクーラーへはオイルが回らない、と。
オイルクーラーコントロールを油圧ベースでやる以上、どうしてもオイル粘度が関係しちゃいますので、オイルが何度の時にオイルクーラーコントロール用バルブが開くのか、あくまで想像の域を出ないんですが。まあまあいんでない?

kgf kgf/cm~2
油圧コントロール用 開口開始荷重 6.5 3.4
全密着 8.6 4.5
全開口 12.0 6.3
new油圧コントロール用 開口開始荷重 2.8 1.4
全開口 5.5 2.9
OCコントロール用 開口開始荷重 12.0 6.3
全開口 20.0 10.5
newOCコントロール用 開口開始荷重 9.0 4.7
全開口 14.5 7.6

ちなみにスプリングレートを計算してみると大体こんな感じ。
レート(kgf/mm)
油圧コントロール用スプリング 0.42
油圧コントロール用スプリング 純正新品 0.27
油圧コントロール用スプリング vw推奨レート 0.49-0.6
オイルクーラコントロール用スプリング 0.2
オイルクーラコントロール用スプリング 純正新品 0.15
VW純正の設定値に届いてないのが気に入らないのですけど、Samba見ると実測値は0.28-0.49kgf/mmしか出ないのが普通らしく、設定値を上回る事はないそうです。0.42ってのはまあ受け入れられる結果と言えましょう。つーか新品のVW純正がまさに0.27kgf/mmしか出てないわけで・・・(-_-;;;


ここでふと、疑問に思ったのが。
シングルリリーフバルブのケースの場合、油圧のコントロールってどうなってんだろう?という事。
んで改めて1200ケースを引っ張り出して比べてみました。

これが油圧コントロールバルブ部分。


赤丸が油圧コントロール用バルブが開いた時に、オイルがパンに向けて吐き出される横穴(を加工した後のプラグ)。8mm。
1200には全くそんな仕掛けはありません。つまり、1200のケースの油圧ラインには開放端が存在しない。油圧は、
1:オイルポンプからの供給量
2:軸受やリフターの隙間からこぼれる油量
3:オイル粘度
の3つのバランスで成り行きで決定され、積極的にコントロールされていない。
軸受のクリアランスが広くなれば油圧がどんどん落ち、オイル粘度が下がれば油圧が落ちる。
オイルポンプをデカくして油圧が上がってもリリーフする仕組みがなく、油圧が上がりすぎればオイルクーラーが不必要にバイパスされオーバーヒートする。
うーん、これは・・・シングルバルブケースは大人しくノーマル排気量で使うしか使い道がないですな。ファクトリーが意図した組み合わせでのみ、まともに機能すると保証されてる。



まだ話は続きます。
リリーフバルブの竪穴の底。これはオイルクーラーコントロール用ですな。


断面図を描くと、まあ大体こんな感じになってます(この図は油圧コントロール用)。
何が言いたいのかっていうとですね、ピストンの面積は1.9cm~2あるんですけど、実際に油圧が掛かる面積はそれよりずっと少ないのです。穴の直径(6mm)分しか掛からないので、なんと面積はピストンの面積の1/6.8。
って事は、計算で出した「バルブ開口開始油圧」の6.8倍が実際の開口開始油圧になってしまう訳で。
それ、バルブ開かんでしょ、っていう。

なんでこんな事になっているのか、というと。このケースは元々リプレイス用としてリリースされたもので、加工を前提として売られたから。


こういう風にテーパーを切って、油圧が掛かる面積を広げてやらなくちゃいけません。
ただ、加工するにしてもピストンが引っかかってきちんと止まる必要があるので、どうしたってピストン全面に油圧を掛けることは出来ないわけで。
つまり実際のバルブ開口開始油圧は計算上のバルブ閉口油圧より常にちょっと大きい。
バルブが少しでも開くとピストン全面に油圧が掛かり、一気にスプリングが圧縮され、開口開始油圧より低い油圧で均衡すると。昔っから何となく疑問に思って、でも追求もしなかった油圧のオーバーシュートの理由がスッキリ飲み込めました。


んで、オイル穴に紙で作った筒を刺してやり、いらんとこに切子が回らないように養生した上でドリルを突っ込んでテーパーを切ってやります。
ハンドドリルに銜えられるのは10mmがMAXなので、このあと12mmのキリを手で気長に回してさらに広げました。


ほい、出来ました。
バルブ全閉時の油圧作用面積が1.13cm~2となりましたので、前述のスプリングと合わせて使うことで油圧コントロール用バルブ開口開始油圧:5.8kgf/cm~2。何とかオイルクーラーのオイルシールが吹き飛ばないでくれそうな値かなと。

オイルクーラーコントロール用バルブの方は8.0kgf/cm~2となりました。


以前このエンジンが稼働していた時は、冷間時に相当に油圧が高かったんじゃ無いかと思われるのですが、元々このケースはポルシェファンと一緒に使われていましたので、純正のオイルクーラーは付いておらず画像のようにブロックオフプレートでバイパスされていました。そのため油圧が高くても漏れずに済んでいたのでしょうね。もしかしたら広すぎたメタルクリアランスも油圧を下げるのに偶然うまいこと貢献していたのかも知れません。





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