TOP -週末の楽しみ〜ROADSTER SIDE〜その壱

11月17日(土)

ヘッドおよび補機類の組み込みを行いました。別段難しいことはなく元通りにしてゆくだけです。
初めにヘッドのスタッドをダブルナットで取り付け。ブロックとの合わせ面を脱脂しておきます。

脱脂を済ませたブロック面にガスケットを置き、ノックピン合わせてヘッドを搭載。ヘッドボルトはお約束のタップ切りと(『M11/P1.5』というサイズですがこのタップが見つけられませんでした。NuMaTeCさんにお借りしたモノです。感謝)極小量のスレッドコンパウンド塗りとワッシャーの面出しをしてから締め込みました。一度キッチリとした締結を経験してしまうと妥協できなくなります。当然一気に締め込まず何段階かに分けてトルクレンチで締め込んでゆきますが、全てのボルトが全く同じ量だけ回ります。これが中古のボルトを使用したり管理が甘いと『ここで来るはず...あれ?』ってな事になります。

ヘッドが載ってしまえばシリンダー内などにダストが入る心配もなくなりますので作業はしやすくなります。

ブロックの左右に補機類を取り付けます。助手席側にはエアコンコンプレッサーとテンショナーを取り付けます。きんぱらさんから頂いたアルミのステー(NB用)を使用したかったのですがコンプレッサー側のボルト位置が合わず断念。わずか700gしかない魅力的なパーツだったのですが...
ブロック運転席側のオイルフィルター取り付け部にオイルクーラーのホース取りだしブロックを取り付けます。合わせ面に付いているゴムシールを取り寄せるのを忘れていたので、薄く液体シールを塗って取り付けました。後付の油圧・油温センサーを締め込み、フィルターを取り付けて緩み防止用のワイアーロックを施します。
運転席側には更にセルモーターとオルタネーターを取り付けます。セルは見た感じでは単なるストレートタイプに見えます。リダクションタイプだと良かったのですが4発の1.8ですからそれは贅沢というモノかもしれません。しかし12.9が回るかどうか若干心配...当然バッテリーはフルに充電しておきます。

鏡面加工したカムを、同じく鏡になっているジャーナルに載せ、キャップを締め込みます。ボルトとネジ穴はタップとダイスを入れてありますが、キャップボルトには普通のオイルを使いました。流石にスレッドコンパウンドを塗る元気は無かったです。塗ったオイルをきちんと拭き取って締め込みました。

封筒に入れて分別しておいたリフター類を、リフターシリンダーに組み込みます。本来再度微調整が必要ですが、当たりが出た後に多少なりクリアランスは変化してしまうのでとりあえず無視します。

ここでブロックに仮留めしておいたメクラ蓋(純正ではオイルプレッシャーセンサー)を外し、インマニから負圧を取るためのフィッティングとホースを取り付けます。ホースに注射器を繋ぎオイルを送り込むのです。
50cc×6本ぶち込んだところでフィッティングから戻ってくる量が多くなってきました。あとは火を飛ばさずにクランキングしてやればOKです。

インマニは加工済ガスケットを挟んで内面を合わせて組みます。
その他ホースや各センサー類の配線を行い、キャブとタコアシを取り付けて完成です。すっかり膨らんでしまっていたホース類も全て新品にしました。ヒーターバイパスホースには耐熱のバンデージを巻き、ワイアーで固定してあります。クランクアングルセンサーの固定位置は適当、アイドルしやすいようとりあえず目一杯進めておきます。

今まで1928用に用意した全てのモノが一つになってゆきます。手間は掛かりますが嬉しくて仕方がありません。

あと残っているパーツはヘッドカバー、ファンネル、ストラットタワーバー、コイルのみ。

しかし、もう少し...ってところでトラブルは起きるモノです。バルタイを取るためダイアルゲージをマグネチックベースに取り付けようとしたところ...ゲージ固定部分のスタッドがバカになりました(大泣
時間も遅かったのですが何よりゲンが悪い気がして、残りの作業を明日に回すことにしました。

 

11月18日(日)

バカになったスタッドネジを切り落とし、ドリルで穴を開けてタップを立て、ボルトで締め込むようにしてベースを復活させました。マイナスドライバーが無いと回せなくなってしまいましたが、これできっちりゲージを固定できるようになりました。端子の先にはピアノ線を継いでおきました。加工カムだとリフターに対しベースサークルが小さいのでリフター上面に端子を当てやすかったのですが、戸田カムでは細くて堅いピアノ線が必要です。

工夫の甲斐あってさくっとバルタイは取れました。設定値はとりあえず大人し目に104/103です。

夕方から作業を開始したので残っていたパーツを取り付けた頃には日が暮れてしまいました。初冬の日暮れはあっという間、いつの間にか辺りは真っ暗です。
充電しておいたバッテリーを繋ぎ、仕事車のバッテリーからジャンプワイヤを繋いで空回しに備えます。プラグを外して圧縮を抜き、クランクアングルセンサーのコネクターを外して火が飛ばないようにしておきます。

セルを10秒も回さないうちに油圧が5.5キロを超えました。流石にNB2ポンプのリリーフ圧は高いですね。どこからもオイル漏れは無いようで一安心です。

さあ、プラグとプラグコード、そしてクランクアングルセンサーコネクタを繋いで遂に火入れです。

『なにかやり忘れたことがあるのでは...』いつも始動の瞬間はそう思って緊張せずにはいられません。

キュ、キュ...キュ
2001年11月18日午後6時。
私の不安感とは裏腹に一瞬で1928は産声を上げました。ガラガラガラという感じの力強い吸気音。間違いなくこいつは男の子です。どれほどこの瞬間を夢見たことでしょう。
288カムでもさすがはキャブ、アイドルは安定しています。点火時期をざっと取り直して水温が上がりサーモが開くまで放っておきます。冬に備えてノーマルサーモにしてしまったのでえらく時間が掛かりました。サーモが開いたところでラジエターキャップを開けてエア抜き。エア抜きが済んだところでエンジン停止、オイル・水漏れの有無とオイルレベルを確認します。

幸い全く問題なしです。

ふうっと一息ついて煙草に火を着け、辺りに散らばった工具を片づけながらニヤニヤが止まりません。嬉しくて嬉しくて仕方がないのです。1928を手がけてから既に18ヶ月半が経過していました。この達成感がたまらない...

 

試乗です。はやる心を抑えながらシートに乗り込みもう一度セルを回します。若干かむ感じがありますが比較的スムーズにクランクは回ります。セルのキャパは気温10度弱では問題ないみたいです。1928はまたもやあっさりと始動しました。

クラッチを繋いでスタート。組み直したクラッチの繋がりにも問題ありません。バラす前と変わらずカッチリと繋がります。そろそろと住宅街を抜ける1928は実にスムーズ。燃焼がバラつく感じも無く、50φとの相性も以前より良いようです。

表通りに出て3000rpmまで上げて走らせます。トルク感は今までの264ハイコンプより良いですが弟のスキッシュ有りのハイコンプで点火を詰めたエンジンには負けています。1928はまだセッティングも何もしていない状況で、点火時期もかなりマージンを取ってありますからまだまだ可能性は有ります。

負荷を掛けないような走り方(ビッグベンチュリーのキャブはこれが苦手)でも回り方自体はスムーズでかなり好感触です♪

....が。
ここでとんでもない事態がっっ(笑



後ろの視界が真っ白だ(^^;

私の頭も真っ白。

まさかこの期に及んで『組みミス』か?信じられない...

オイルが燃焼室に入っています。当然考えられるのはバルブステムオイルシールもしくはピストンリングからのオイル漏れ。最低でもとりあえずヘッドをばらさなくては始まりません。

 

...がしかし時間に猶予がありません。
ここまで自分で組み上げてきた1928です。他人に任せてしまうのはあまりに悲しかったのですが、残された時間はごく僅か、とてもきっちりした組み直しは出来そうにありません。
涙を呑んで全幅の信頼を置いている『おやっさん(<匿名で申し訳ないです...)』にお願いすることにしました。忙しい中引き受けてくれたおやっさんに感謝、色々ありましたがこれで無事に組み上がるのは間違いないでしょう。ともかく僅か15〜20分間回っただけで1928は再度全バラになってしまいました。
そんな短時間でエンジンをばらすことなどそうそうあるはずもなく、また自分の組みをおやっさんに見て貰える貴重な機会でもある、そう前向きに考えてみることにしました。
(実際貴重なものを見ることが出来ました。わずか20分であっても回ったエンジンにはその痕跡がしっかりと残っていました)



11月22日(木)

しかし数日後私は『おやっさんに任せてしまって本当に良かった』と思うことになったのでした。

バラした1928は全ての組み、部品ともに異常はありませんでした。ステムシールも正常でした。
私にはもちろん、おやっさんにも原因が掴めないのです...
おやっさんはありとあらゆる可能性を整備書の数値とにらめっこしながら検討し実測し否定していきました。

私が一人でやっていたら組みミスでは無かったことを嬉しく思う反面、間違いなく途方に暮れていました。基本的に私はトラブルシュートが苦手なのです(作業そのものは嫌いじゃないけど)。修理は推理、とか言って楽しむ余裕などあるはずがありません。
分からないなら原因究明は放っておいて、とりあえず組み直してしまったことでしょう。無事にエンジンが掛かったとしても常におびえながらドライブしなくてはいけなくなってしまいます。うあ〜そんなの嫌だぁ。

 

おやっさんの苦労の甲斐あって無事に1928は再度始動しました。
2001年11月22日午後8時のことでした。

 

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