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Keigo1951 MS2(DIY PNP)インストール

Keigoのマシンは長年キャブ仕様で楽しんできましたが、今回はインジェクションで行きます。

使うのはMegaSquirtの派生品であるDIY Auto TuneのDIYPNP V1.5です。
MegaSquirtにはいくつかバージョンがありますがV1.5 DIYPNPは2代目、MS2と呼称される群に属する製品の一つ(最新版はMS3)。公式ページのマニュアルはこちら。後述するPC側のソフトウェア=TunerStudioのマニュアルもここにあります。MegaSquirt自体は汎用のフルコンで、インストールするにはかつてのMoTeC同様に配線を一本一本つなぐ必要があります。
ですが、ありがたいことにそのまま純正ECUカプラがポンと刺さるようにしてくれている製品がV1.5 DIYPNPで、他に同様の製品としてはMSPNP2等があります。DIY Auto TuneのDIYPNP V1.5のPNPとはPlug 'n Playの略ですが、DIYと名前にある通りバラバラの部品の状態で供給され、ユーザーが組み立てる必要があります。組み立ててくれたのはご存じちゃけさん。
DIYPNPはすでに販売終了ですが、MSPNP2はまだ買えます。こちらは組み立てられた状態でお届けで文字通りプラグ&プレイ可能で800ドルちょい。MoTeCは言うに及ばず最近よく名前を聞くLINKコンピュータなんかと比べてもかなり安いですね。かつてのフリーダムよりも安い。驚愕です。


基盤の構成と組み立て方はこちらの動画を見るとよくわかります。


V1.5 DIYPNPはMicroSquirtをベースとして組み立てられており、白いのがMicroSquirtモジュール基盤。 プロセッサ、センサー入力、2つのインジェクタードライバーなどが載っています。その下の紺色が V1.5 DIYPNPのメイン基板で、 アイドルエアコントロール(ISCV)、 12ボルトインプット/ アウトプット、リレーコントロールなどが載っています。左側に並んでいる同じく紺色のがNA8Cの純正ECUカプラの載った基盤。右に見える黒いのは、

純正ECUにはない入出力(例えばA/Fの入力)を割り当てるためのD-sub15ピン。横に見える丸穴プラグは12v供給用で、家の中でいじるときにとても便利。


MegaSquirt関連についての情報は英語でググると大量に見つかります。ロードスターについてそのままズバリ答えを書いてくれているものもたくさんあります。ただ、用語の使い方などがMoTeCとは異なっていて最初はけっこう戸惑いました。
ただ、わかってしまえばなんてことはないです。
そこで初めてMegaSquirtをいじる人の理解の助けになるだろうTipsをここに列記しておこうと思います。マニュアルに出てくる英語もほとんどカタカナになってる単語ばかりなので、これらが予め分かっていればそう苦労せずに理解できるはずです。
# 理解できてしまうと何がそんなに難しかったのかが思い出せなくなるので今のうちに・・・。


ド基本

◆Controller:MegaSquirt本体のこと
MegaSquirtの公式ページにハードに関するマニュアルがPDFで置いてあり全てが網羅されているはずですが、何しろ117ページもあります。とても全部読んでられないので、入出力を足す際など必要に応じて参照する辞書みたいな扱い。

◆TunerStudio:MegaSquirtを書き換えるためのPC側のソフトウェアの名前。
ここから最新バージョンがダウンロードできます公式マニュアルはこちら、207ページあります。英語が嫌いでなければ分からないことが出るたびにググるより本腰入れて最初に全部目を通した方が結果的に早いかもしれません。
オープンソースのため様々なバージョンが存在しバージョンが異なるとソフトの見た目すら変わります。そのため、webで見つけた情報に該当する項目を自分のTunerStudioで探そうとして、見つけられなかったり違いにまごつくことがままあります。
TunerStudioは複数開くことができ、コピー&ペーストも使えます。ファイルデータのインポート/ エクスポート機能もありますが、二つ開いてコピペした方が早い気がする。

◆Code:MegaSquirt本体のファームウェア、もしくはその一部分のこと。 MegaSquirtのファームウェアはオープンソースとなっており、その気になればTunerStudio同様に自由に更新できます。ほとんどの人はその技術も情熱も持たないでしょうけど・・・
TunerStudioとMegaSquirtのtuneファイルのバージョンは対をなしていて、対応していないMegaSquirtのファイル(拡張子=.msq)を読み込むと、必要なTunerStudioのバージョンのダウンロードを求められます。上記のように、読み込んだ後インターフェースデザインが変わることもあります。
MegaSquirtのファームウェア更新はTunerStudioに接続することで可能になります。
実際のやり方はDIY Auto Tuneのこのページに行くと書いてあります。MS2の場合、蓋を開けてジャンパーピンを刺し、12vを供給した状態でTunerStudioと繋いでファームウェアを書き込みます。

ファームウェア自体はMegaSquirtのDownloadsのページにあります。

◆TunerStudioのバージョンが分からない:ここに書いてあります。もしくはHelpを開ける。.msqファイル(下記)やProjectを開くとその名前とファームウェアもここに表示されます。

◆TunerStudioのファイルの保存場所と拡張子:保存場所=New Projectを始める際に特に指定していなければ C>Users>Documentsフォルダ内、拡張子=.msq

TunerStudioの操り方〜初めてエンジンを掛けるまで

◆TunerStudioの最初の画面、どこから始めるのか:

MS2を接続した状態で「Create New Project」をクリックしてスタートです。MS2との接続を要求されます。「Open Project」から既存のファイル(サンプルとして最初から入ってるもの等)を開いた場合、できるのは参照のみ。MS2は書き換えられません。
次回からは「Open Last Project」から最後に使ったファイルにアクセスが可能です。
# 2021.05.06 追記
より正確な記述をこちらに置いておきます。
/追記

◆Project:configuration(構成)=各数値の役割指示のような、セッティングの各数値「以外」が入っている。MS2と繋いでデータを更新していくために必須。

◆もらった.msqファイルの開き方:その.msqファイルをダブルクリック。勝手にTunerStudioが立ち上がります。

もしくはFile>Load Tune(msq)でその.msqファイルを選択。


いずれの場合も既存のProjectを使って開くか、Temporary(一時的な)Projectを使うか尋ねられます。Temporary Projectを選んだ場合、必要に応じてTunerStudioの別バージョンをダウンロードします。Temporary Projectで開くとMS2と繋ぐことはできません。
既存のProjectを使って開いた場合MS2と通信できますがおすすめしません。既存のProjectとその.msqファイルが作られたProjectのバージョンが異なるケースが往々にしておきます。その際、一致しているconfiguration項目は正しく読み込まれますが、そうでない項目ではエラーが起きます。Temporary Projectを選び、参照のみに留めつつ、必要な情報を自分がいじっている.msqファイルに手作業で書き込んでいく方が無難です。

◆Required Fuel:基本となる燃料の噴射時間。単位はms。自分で入力してもいいがこのボタンを押して必要な項目を入力すると自動計算してくれる。MoTeCで言うところのIJPU。

◆Fuel VE Table:燃料調整のメインマップがこれ。書かれている数字はRequired Fuel(=Req-Fuel)に対してのパーセンテージ。MoTeCと異なり、100%を超える入力も受け付けてくれるのが便利。


# 2021.06.12追記
そもそも Required Fuel と Fuel VE Table の値は何を意味しているのか?
Incorporate AFR Target を Include(含む)とするか Don't include(含まない)とするかで少し異なってきます。


Incorporate AFR Targetを Includeとした場合、VE Tableの値は「空気量そのもの」を表し、最終的に燃料をどれだけ吹くかは「14.7÷AFR Tableの値」を掛け算して決定されます。AFR Tableで設定したターゲットA/Fの値が変われば、燃料噴射量も変わるということです。

一方、Don't Includeとした場合は、AFR Tableの値はEGOコントロール(=フィードバック制御)を行う際と、ログを使って分析掛ける際の目標値として使わわれるのみ。EGOコントロールをOFFにするとAFR Tableをどういじろうが燃料噴射量は変わりません。

Don't include AFR Targetの場合、Required Fuelの値(ms)=シリンダー容積に対し吸気の充填効率が100%(=Fuel VE Tableの数値が「100」)の時に、A/F=14.7になる噴射時間、を意味しています。

12.5で回す場合は、14.7÷12.5=1.17倍のガソリンが必要になるので充填効率100%でTableの値は117です。

Include / Don't include 、どちらでもいいですが、途中で変えるとVE Table作り直しになるので最初に心して選ぶ必要があります。ITB制御の場合はDon'tを選ぶことが多いかと思います。ちなみにマスフロー制御の場合の考え方はROMチューンと同じで、Include選択が必須です。
/ 追記ここまで

◆Squirt Per Engine Cycle:エンジン1サイクル(=クランクで720°回転)当たり、各インジェクターが何回噴射するか。シーケンシャルだったら「1」。

◆Injector Staging:1気筒に対して複数のインジェクターを配置している場合に重要になる項目。ターボでツインインジェクターとか、4スロで上流/ 下流噴射使い分けているとかの猛者用。Simultaneousだと複数のインジェクターが同時噴射/ Alternatingだと代わる代わる噴射。インジェクターが1個しかないその他大勢のプライベータはSimultaneousを選べばOK。

◆Sequential Injection/ Sequential Siamese:Sequential/Semi-Sequentialを選択する。Siameseにうっかり興味を持って辞典を引くとシャム猫が出てきて訳が分からなくなる。これはECUから見た1番気筒の圧縮上死点/排気上死点が通常と異なる特殊なエンジン(クラシックミニ等)に対応するためのモード。無視してOK。
Sequential/Semi-Sequentialどちらになるのかはクランクアングルセンサーのタイプによる。カム側にセンサーがついていてクランク2回転4行程のうちどの行程なのかが判別できる場合はSequentialが可能、圧縮上死点/ 排気上死点が判別できない場合はSemi-Sequentialとなる。ロードスターはクラセンがカムについているのでSequentialにできる。

◆Cam trigger:クランクアングルだけでなく排気側か圧縮側かを判断できるセンサー、という意味で時々使われている言葉。必ずしもNBみたいにクランク側とカム側の2個のセンサーが必要って訳ではない。

◆Tableのy軸の最小値が0から始まってない:元がスピードデンシティ制御用(=kPa)になっているから。制御方法をα-Nにしても自動では書き換わってくれない。自分で書き換えればOK。Tableの軸をクリックして現れるボックスに任意の値を入力するだけで書き換えられるのはとても便利。

◆bin:Tableの「セル」のこと。

◆Z-axis:binに入力された値のこと。3Dマップで見た時の高さに当たる。

◆センサーのキャリブレーションが見つからない:ここにあります。

エンジン始動前にThrottle Positionセンサー値(TPS)の校正はマスト。他のセンサーは後からでも大丈夫。

◆Mapセンサー:DIYPNP本体に内蔵されている。デフォルトだとキーONの瞬間に外気圧を取得し、クランキング後インマニ圧測定へと移行するように設定されている。

◆Gauge Clusterに表示される情報を変えたい:

各ゲージの上で右クリックすると出てきます。




以上で基本解説は終わり。次は実践。ECUを入れ替えDIYPNP Documentation for 1994-1995 Mazda Miataを読んで吸気温センサーを物理的にインストール。ここに基本設定の数値もありますのでそのまま自分の.msqファイルにコピペ。

こちらのステップバイステップでMiataへのインストールを解説してくれているblog始動マニュアルも参考になるかと思います。


NA6CEですが、インストールからエンジンを掛けるまでの初期設定を詳しく説明してくれている動画。センサーのキャリブレーションや、試験用に点火時期を10度に固定する方法も述べられています(ST-Signヒューズを外す必要があるのはNA6CEのみ)。

◆Spark Modeの選択が謎:

4G63を選ぶ。三菱ランエボに積まれていたエンジン。クラセンの特性が同じらしい。ロードスターのクラセンはよく見ると三菱のマークが刻印されている。

ちなみにDizzyとはデスビのこと。

◆ケッチン食らいます:最初に始動を試みる際、クランクアングルセンサーの位置が正しいかどうかは運任せ。

最初はクラセンをリタード側に振っておいた方が無難。クラセンを回した角度に対して、点火時期の変化量は倍(カムが1回転する間にクランクは2回転するので)。タイミングランプで見ながら徐々に進めて行ってください。

◆Tableをいじってもクランキング時の噴射量/ 点火時期が変化しません:

Cranking RPMで指定された回転数以下はクランキング時と判断され、Tableではなく別途設けられた値で管理されます。

クランキング時噴射量はこちら。うちの場合だと倍以上に増量してやっと始動できました。

クランキング時点火時期は「Cranking Advance」で管理されています。
ちなみに。バッテリーをフル充電しておいたらクランキング回転数が上記のCranking RPM=300を超えたらしく、その瞬間Table上の値を読み込んでしまい強力なケッチンを食らいました。450rpm位は出るみたいですね、Cranking RPMは600位にしておいた方が無難です。








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