TOP -週末の楽しみ〜ROADSTER SIDE〜その五 -週末の楽しみ779

Keigo1951 起動〜ITBモードについて

あとはエンジンを元通り積み込んでキーを捻れば一発始動、のはずでした。


カッパースプレーを吹きなおしたガスケット。
古いカッパースプレーはブレクリで簡単にきれいになります。


ヘッドボルトを締めている途中でトルクレンチがぶっ壊れました。スエカゲツールの3/8でしたが、ラチェットが破壊されまして。予備で買っておいた1/2の方で締めました。3/8はいつか壊れるだろうとは思っていましたがここできましたか。
よく見るとメーターフードが外れています。Keigoがバキューム配管をいじっていたためなのですが、どうやらこの時にメーター配線のバグが発生したようです。Chargeランプが点かなくなりました。てっきりエンジンハーネス・オルタネータ側の問題だとばかり思ってしまったため、原因にたどり着くまでちょっと時間かかりました。。
オルタのアース→OK、オルタのカプラ電圧チェック→12v来てない、配線をさかのぼりx-11共通カプラチェック→オルタ側と導通あるが12v来てない→メーターカプラとx-11で導通チェック→OK・・・
うんざりしながらメーター裏の配線をぐりぐりしたら点灯。おいおい・・・このタイミングでですか。

もう一つ問題が。
実のところ、まだ解決していないのですが、クランキング時のガソリン噴射が思うようになりません。
具体的にいうと、どれだけ増量しても燃料を吹いている気配がありません。


TunerStudioにはインジェクターやコイル等のテストモードがあります。


何発吹かせるか、燃ポンを動かすか、等細かく設定が可能です。結果はインジェクターはシロで、ちゃんと動作していました(燃焼室をガソリンまみれにするわけにはいかないので燃ポンは同時には動かしていません)。
燃ポン単独ではテストし、動作を確認。実際クランキングした際にも燃圧が掛かっていましたし、Priming Pulseを使用した際にはIGN ONで燃料噴射が確認できました(Priming Pulseを0に設定するとIGN ONで燃ポンが起動しないことも発見しました)。


ついでにいうとISCVも同様にチェックが可能です。

やけになってあれこれいじくりまわしてたのですがさっぱり。
ところが昼めし食って再度トライしたらなぜか何事もなかったかのように起動。何度やっても起動。Priming Pulseを目いっぱい入れてクランキング時のガソリン噴射量不足を補う一方(クランキング前に強制的にガソリンを送り込む仕組み、キャブで言うところの加速ポンプですね)、クランキングRPMを設定可能最低回転数の200にセットし、クランキング時にメインTableを使うことを考えたのですが、それが当たりだったのかもしれません。

起動はできましたが。Cranking Pulseの値が噴射量に反映されない理由は依然として分からないまま。

しかしまあ、とにかく今は先に進めることにしました。使っていく中で何か気づくかもしれませんし。

起動したのだから実走セッティングです。

MegaSquirtは4つの制御方法を持っています。

●マスフロー:質量と流量、つまりダイレクトに空気の質量と流量を測る方式;NA8CEのホットワイヤー式エアフロを用いたシステムがこれ。NA6CEのフラップ式エアフロだと流量のみで質量は測れていないですが、これも分類上はマスフロー。L-ジェトロニックとも(BOSCHの特許)。

●スピードデンシティ:速度と濃度、つまり空気量の測定を、エンジン回転スピードx空気濃度で代替する方式。空気濃度測定は圧力センサーを使用する。D-ジェトロと呼ばれることもある。D-ジェトロニック、Dジェとも(BOSCHの特許)。
MegaSquirtのDジェはさらに2種類に分かれます。
吸気管圧をそのまま負荷軸の値として用いるもの/ 吸気管圧を大気圧で割って負荷軸の値として用いるもの、です。MegaSquirtは後者の値を%Baroと呼んでいます。Baroとは大気圧のこと。大気圧に対する吸気管圧の割合、ということですね。
吸気管圧をそのまま用いたDジェの場合、大気圧補正は必要ない、というより、上述の原理から考えて大気圧で補正してしまうとおかしなことになります。
例えば。アクセル全開で 吸気管圧=大気圧 になった状態を考えます。強烈な低気圧が来て外気圧が 0.8気圧 になったとします。この時テーブル上で読み込まれるセルは 吸気管圧=0.8気圧 の行。
燃料テーブルの0.8気圧の行はもともと1.0気圧の行より少ない燃料を噴射するように書かれているはずで、大気圧補正、つまり0.8を掛けてしまうと薄くなりすぎてしまいます。
理論上は一応辻褄が合うのですが、吸気管圧0.8/ 気圧1.0 と 吸気管圧0.8/ 気圧0.8 では求められる燃料量が実際には異なっているため、純粋なDジェは高地に行くと調子が悪いことがあります。
吸気管圧を大気圧で割って負荷軸の値として用いることで、この問題を解決しようとするのがMegaSquirtの %Baro。前述の例だと、吸気管圧0.8/ 外気圧0.8 なので、%Baroは100となり、テーブルの最大負荷の行を読むことになります。大気圧がどうであろうと常にテーブル上で負荷軸が100%まで使えるのがメリット。ここに大気圧補正0.8を掛ければ最終的な噴射量となります。

●アルファ−N:スロットルスピードとも。空気量の測定をスロットルの開度(TPS値)xエンジン回転速度で代替するもの。

●ITB:インディビジュアルスロットルボディ=独立スロットル、俗にいう4スロに対応した新方式。以下に詳細を記しますが、平たく言うと、ITBモードではTPS値とインマニ圧値の両方を一つのTable上で扱えるようになります。MoTeCでやった「TPSをメインマップの負荷軸に、インマニ圧をFuel secondary load mapの負荷軸にそれぞれ使用し、合計値を噴射量とする方法」を一枚のテーブルで実現します。



MoTeCではずっとTPS値をメインマップの負荷軸として選択してきましたので、今回も最初は慣れ親しんだα-Nにしようかと思ったのですが・・・一度マップを完成させてしまってから制御方法を変更するのは恐らく億劫に感じられると思われたので初めからITBモードを選択することにしました。


さて、ITBモードではどのように負荷軸が決定されるのでしょうか?
Basic/Load Settings > ITB Load Settings で以下の2つのグラフが表示されます。

一つ目:ITB Load TPS Switchpoints

MS2のマニュアルを見ると次のよう。
The curve defines the TPS value where the MAP load reaches %Baro switchpoint. 「この曲線はインマニ圧負荷が%Baroへのスイッチポイントに到達するTPS値を定義します」

これだけだとかなり分かりにくい。意訳すると
「この曲線は、Dジェ制御でスロットルを開けていき、インマニ圧がある%Baroに達した時点の負荷と等しい負荷を表すTPS値を各回転数において示します」となります。
つまり、各回転数においてこれ以上のTPS値だとα-Nに移行しますよ(移行時の%Baroは常に同じ)、というグラフ。ITBモードではα-Nを高負荷時に、Dジェを低負荷時に主に使用します。独立スロットルはアイドリング領域や低RPMでは負圧が強くなく、わずかにスロットルを開けただけでほぼ大気圧に近くなってしまいます。一方で高RPMではシングルスロットルと変わらないほど十分な負圧が発生します。そのためいつ切り替わるのか、は回転数により異なり、低回転ではわずかなアクセル開度で、高回転では高いアクセル開度で、Dジェからα-Nにスイッチします。この場合のDジェとは上述の吸気管圧を大気圧で割って負荷軸の値として用いるもので、つまり%Baroです。
多くの場合、MAP=90%BaroでTPS制御へスイッチするとよろしいようです。言い換えるとMAP値が負荷量を比較的正確に反映出来るのは90%Baroまで、という事ですね。


セットするには実走が必要です。ログを取得し、MAP(インマニ圧)/Barometer(大気圧)=90%となっているところを探し、その時のTPS値とRPM値をメモします。画像のようにスロットル開度の変化が増大方向かつ穏やかな方がデータの信頼度が上がります。ひたすらサンプルを拾っていって、上記のグラフを完成させます。まだ慣らし中なので4000rpmちょいまでしかログが取得できていませんが、だいたいは直線的なラインが引かれるようですので、4000から上もこのまま上に伸ばしてやればOK。

でかいカムに4スロなので低い回転数ではちょっと踏むとすぐに90%Baroを超えてしまうことが分かります。
このグラフはとても重要です。


二つ目:ITB Load At TPS Swichingpoint

The curve is used to allocate the bins on the VE table to either Speed-Density or Alpha-N tuning. The area of the VE table below the load value from the curve will be used for Speed-Density tuning and the area above the curve will be used for Alpha-N tuning. 「曲線は、VEテーブルのセルをSpeed-DensityまたはAlpha-Nチューニングのいずれかに割り当てるために使用されます。曲線で示される負荷値の下のVEテーブルの領域は、Speed-Densityチューニングに使用され、曲線の上の領域は、Alpha-Nチューニングに使用されます」

VE Table上で、Dジェとα-Nの境界を決めているのがこのグラフ。お好みで自由にいじってOK。当初は低い回転数ではDジェに広めの領域を、高い回転数ではα-Nに広めの領域を、それぞれ割り当てる=右下がりのグラフが推奨されていました。
例えば低い回転数ではアクセル開度に対してのMAPの変動が大きいため、低い回転数では多くのbinをDジェに割り当てることで、bin間の数値の変化を少なくする狙いだったようです。


ただ現在は全ての回転数で50%に設定することが推奨されています。


それで不都合ないなら、VE Tableを見た際にDジェ/ α-N領域がLoad=50%を境に上下にスパッと分かれている方が分かりやすいかも。


境界部分でMAP=90%Baroとなっており、それ以下のLoadは%Baroを基に計算されます。さらに踏み込んでMAPが90%Baro以上に上がった瞬間、ITB Load Settingsにおいて各回転数で設定したTPS値(白字)にスイッチする訳ですね。移行がスムーズに行われるためには、前述の「1つ目のグラフ」の正確性が重要になるわけです。
Tableの数値がTPS値/ MAP値の値に応じてどう使われるか、アルゴリズムはSteve's BMW 320i Siteに紹介されていますが実のところこれを意識することはなく、計算方法を知らなくてもセッティングは完成させられます。出てきたA/F値に応じてbinの値を増減していくだけ。α-N単独での制御よりかなりバラツキの少ないセッティングが出来ていきます。狙ったA/Fの再現度が素晴らしいです。


ログを取得するにはPCをMS2に接続しておく必要がありますが、その代わりログファイルには文字通り全てが記録されており、0.062秒単位で参照していくことが出来ます。
グラフの右上に瞬間瞬間の数値が出ています。これはアイドリングを見ているところで、α-NならTPS値=0でY軸の一番下の行を読んでいるところですが、ITBモードだとMAP値がゼロになることはないためLoad=0にはなりません。一つ上の図では便宜上Load軸の最小値を0にしていますが、実際にはそんな小さいLoad値が読まれることはないので不必要。


実際のセッティング作業もMoTeC M4に比して圧倒的に効率的。binの数値の変更はドラッグした範囲を一律で、ある値に設定/ 一定値増減/ 一定割合で増減出来るので、一個一個数字を打ち込む必要はありません。

Keigoに運転させてドライブしたらまともに街乗りできるようになるまで10〜15分、急坂を探しながら1時間ほどドライブしたら4000以下のセッティングが9割以上出来てしまいました。
点火時期の方はまだまだ煮詰める余地ありますが、こっちはピストンがアレなせいもあって怖いので大きめのマージン取ったところからゆっくり時間かけて詰めます。


エンジンルームから燃料配管を引き出し燃圧計をつないであります。慣らしが終わり、全開で燃圧がどうなるか確認するまでこのまま(笑)。


もしかしたらエンジンが再起動できないかもしれない、という不安を抱えつつ今日は無事に帰ってこられました。

早いところ解決したいものです。





TOPへ  
 
inserted by FC2 system