点火時期について

点火時期はロードスターをキャブにしている人にとっては、なじみの薄いところかもしれません。
ロードスターの場合、点火時期はノーマルがコンピューター制御ですので、それを生かしてコントロールするのが普通ですが、1600ならエアフロ全開、1800なら原田の点火時期補正ユニット、で終わりにしている事が多いようです。

1600の場合、エアフロ全開にしてマップの空気量最大のところを読ませ、アイドル の点火時期をクランクアングルセンサーを回してBTDC10度にあわせることで、踏んでいくと最大で35 度くらいになる筈ですので、それはそれでいいでしょう。フラップ式のエアフロですので空気量の変化(要は フラップの角度の変化)による抵抗の変化を調べ、エアフロの替わりに取り付けて入力するのも簡単です。

問 題は1800です。ホットワイアー式のエアフロですので簡単には抵抗値を調べることは出来ません。その ため原田のユニットを使う人が多いのだと思うのですが、これがなかなかの曲者です。原田に問い合わせても「あくまでも進角させるためのものです」との答えしか返ってこなくて、マップのどの領域を読んでいるか は分からないそうです。確かにタイミングランプで調べるとマップのどの空気量とも違う進角の仕方をするのですが、基本的には吸入空気量のかなり小さいところを読んでいるような進角の仕方をするのです。当然全開時の点火時期とし ては早すぎます。
このへんはGテックレポート1も見てくださいね。

1800も吸入空気量の最大のところを読ませられれば、とりあえず1600と同じ手が使えるのですが、 その方法が分かりません。もともと点火時期は「空気量×回転数」でマップが描かれており、水温の補正が 入っています。スロットルセンサーは燃調の補正センサーだと思うので関係ないでしょう。何らかのフィー ドバックがかかっているならマージン方向に変化するので、むしろ点火時期は遅くなる筈であり、早くなっ ているのは納得がいきません。検討中であります。

もちろん点火時期を完璧に制御したいなら方法はあり、コンピューターが相手ですから当然フルコンかロ ムを使うことになります。

フルコンはハルテックから点火時期のみコントロールできるのがでています。13万くらい。もちろんモーテックでも良いですが点火時期用としての設定がなく高くつきます。キャブの点火時期用としてはフリーダムコンピューターが一番じゃないでしょうか。安いから。ハーネスとセンサー類を入れても15万くらいで済みます。スロポジ×回転数でマップが書けるので、スロポジのセンサーを活用して、補正をいれたより細かい制御が出来ます。

フリーダムについてはリンクページからRジャンキーさんのHPへ飛んでいってください。ツワモノぞろいです。

一方ロムはマルハモータースなどからキャブ用ロムとして売られているものを使うか(5万円から10万 円位)、自分で作るかです。ロムはロードスター情報にこだわらずに、あちこちのショップに問い合わせると、安く買えるロムもあったりします。ただロムのデータ自体を希望どおりに書いてもらえるかどうかは不明です。点火時期は仕様で大きく変わるものですし、燃調のセッティングとの兼ね合いもありますからねぇ。

で、今のところ私がどうしているかというと、ITCをいまだに使っているわけです。ITCはサブコンですからずいぶん低レベルの制御しかできません。サブコンの「コン」はコントローラーの「コン」であり(「コンピューター」ではない)もとのデータは変えることなく、補正をかけることでガスの量や点火時期を変化さ せようというものです。
それでも、もとのデータを知った上で、どう補正されるのかが分かっているなら、サブコンでも結構遊べます。

マップの山のうち一本しかラインを読んでいないキャブの場合はもとのデータからの変化は簡単に予測で きますし、手元ですぐにいじれるのがITCのいい所です。ただ、もとのグラフの形が理想とずいぶんかけ離 れているのと、補正できるポイントが5箇所しかないというセッティングの自由度の少なさが原因で、なか なか思うようにはならず苦労しました。それでも私がITCを使っていたのは、まだセッティングの方向 性が見定まらないためです。この状態で高価なものを購入したところで、その能力は無駄になります。ITC のジグザグした点火時期がかえって何かを教えてくれそうな気がします。フルコンは今の状態で何が足りないのかはっきりしてからにしようと思います。

点火時期のセッティングの基本的な考えかたについて述べていきます。そもそも何故点火時期が重要なの でしょうか。これには火炎の伝播速度が関係しています。フレームスピードとも言いますが、混合気は点火 プラグで点火されてすぐに「爆発」するのではなく、時間をかけて燃焼していきます。一方でピストンがATDC 10度くらいのところで燃焼室の圧力が最大になるのが、一番効率よく燃焼エネルギーをピストンを押し下 げる力に変換できるとされています。

という事はこれらを見越して早めに点火することが効率を考えると重 要なわけです。仮にフレームスピードが一定としても、ピストンスピードが違えば(要は回転数が違えば) どの時期に点火するかは違ってきます。ピストンスピードが上がればそれだけクランクの角度上で考えると 早い角度で点火させなければなりません。しかも実際には充填効率や吸気温度の違いからくる圧縮比の違い や、空燃比の変化により、フレームスピードが変わってきますので計算で簡単に求めることはできません。 実際にエンジンを回してみないことには分からない訳です。

点火時期のセッティングに必ず付きまとうのがノッキングです。ノッキングは異常燃焼などといわれます。 つまり点火プラグ以外の火種が勝手にできて燃焼が起きることをいいます。プラグにより点火された混合気 は一気にその体積を増やし、まだ燃えていない混合気を押しつぶしながら燃え広がります。まだ燃えていな い混合気は、ピストンの上昇による圧縮以外に、すでに燃えた混合気により圧縮されます。しかも燃えてい る混合気により圧縮されるので、未燃ガスの温度はどんどん上がります。容積で8割燃えているように見え ても、質量では8分の1が燃えただけだそうです。そこでピストンが下がっていって圧力が下がってくれれ ばいいのですが、そうでないときには火種がなくても自己着火します。ドライバーにはカチカチとかチリチリという音となって聞こ えます。ノッキングがひどければ、ピストン溶損が代表的な結果でヘッドのスキッシュ部にもダ メージを与えることも多いです。

ガソリンの自己着火のしにくさがオクタン価という指標です。RONとかMONといういくつかの測り方が あります。同じ条件ならハイオクとレギュラーではフレームスピードや燃焼エネルギーは変わりません。レ ギュラーだと、エンジンによってはATDC10度に最大圧力になるような点火時期にしようとした時に、ノ ッキングが起きてしまいできないことがあるわけです。特にハイコンプやハイブースト、ぎりぎりまで薄く詰めた 空燃比などではレギュラーは使いにくいのです。そういったエンジンではない場合ではレギュラーで良いのです。点火時期が進みすぎているためにハイオクを使用しているエンジンの点火時 期を正常化してレギュラーを入れたところパワーが上がった、というのがGテックレポート1ですね。

ノッキングを頼りにして進んでいるのを良しとしていた点火時期ですが実際にはハイオクだから出なかった だけであり実際にはMBTを超えたところにセットしてしまっていたわけです。
#フレームスピードはレギュラーのほうが速いそうです。カロリーも若干ですがレギュラーの方が上だそ うです。「BBSから」を見てください(01.01.26訂正)

ここまでくると点火時期の最適時期を決める要素が分かってきます。圧縮比、吸気温度、フレームスピー ド、ピストンスピードです。

1:圧縮比 圧縮が上がれば点火時期は遅くなります。メカニカルな圧縮比はもちろんのこと、充填効率が上 がった場合の実質的な圧縮比の上昇も同じです。
2:吸気温度 空気は温度が上がると体積あたりの分子量は低下します。しかしエンジン内で冷やされるわけ ではないので、圧縮比に変化はありません。吸気温度が上がれば、混合気が圧縮されたときに自己着火の起 きる温度まで上がりやすくなるので、点火時期は遅くします。
3:フレームスピード 火炎伝播の速さは空燃比で変化します。薄い空燃比ではフレームスピードが上がり ますので点火時期は遅くなります。よく、「点火時期を先に決める」というのを、そのまま言葉どおり受け取 るのはナンセンスであることが分かります。燃調と点火時期は密接に関係しています。点火時期が大きく狂 っていれば、燃調の変化ははっきりと出にくく、プラグでも確認しにくくなります。そういう意味では点火 時期が先でそれから燃調を決めていきますが、それで終わりではありません。
4:ピストンスピード 高回転になるほど早く点火することになります。ただ、単純に回転数の上昇した割合だけ早くなるわけではあ りません。

よくノッキングの出るぎりぎりまで進角すると一番パワーが出る、といいます。これはMBTがノック領域の中にある場合の話であって、そうでない場合(ノッキング限界の高いエンジンや高回転)ではMBTまで進角させてもノッキングが出ないわけですからノック手前までひたすら進角するのはナンセンス。
高回転ではピストンスピードが速く、進角しすぎてもノッキングが起きる前にピストンが下がっていって しまうのでノッキングが起きません。ノッキングは指標にならず、エンジンの調子を見ながら進角していきます。進角しすぎると回転が重くなる、と言われます。空燃比が濃いときとは違う感じの回転上昇の重さです。

点火時期セッティングの時には排気温度計があると参考になります。点火が遅ければ、排 気は未燃ガスのままタコアシを走りつつ燃えていくことになり、排気温度が上がります。排気温度が上がる と、油温や水温も追って変化し上がってきます。でも異常燃焼がおきた場合でもエンジンは熱くなります。いつ もより油温、水温が上がるというのは、効率的にエネルギーが使われていないわけですから点火時期を見直 す指標になります。

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