”1928”のセットアップ

やっと仕様がほぼ決まりました(苦笑)。普通は決めてから取り掛かるもののような気はするんですがね。エンジンの仕様を現実のものとしてあれこれ考えるのは実に楽しいものです、しっかりと7ヶ月間も楽しみました。

当初、ヘッドをやり直そうと考えて今回のエンジンいじりが始まりました。今使っているエンジンのヘッドは、ブローに懲りてスキッシュを削り落としてしまった、今となってはとってもお恥ずかしい物。高回転では差が出ませんが、5500くらいまでは完全にスキッシュ有りの弟のエンジンに置いて行かれます。カムとピストンは同じですが(私のは面研が0.3ミリ入っていますので、圧縮は同じくらい?)更に私のはバルブシートカットに工夫をしてポートもいじってあるのに...

まずは新しいエンジンを一機手に入れてヘッドチューンに取りかかりました。EXポートを削り、燃焼室を磨きシートカットをしました。そのまま組むのも癪に障る(ブロー前に戻っただけなので)とカムを換えたいな、と考えました。264から一つ上げ272カムです。そうすると圧縮が11では心許ないので面研を0.5ミリくらい入れ、せめて11.5までは上げたいところです。ここまでの加工は「ヘッド加工」に書いた部分ですね。

此処まで考えたところでドライダさんの車に乗せてもらいました。ちょうどこの車が272のカムでとても参考になりました。私的にはこれで十分上が回る、と思ったのですが、オーナー(=チューナー)はもう一つカムを上げたい、高回転にもう一山欲しいと言います。

そう聞くと私もどうせ新規にカムを買うなら288にしちゃえ、と思い始め、その言葉の響きに痺れつつ戸田288カムをIN/EXとも購入してしまいました。勢い、でしたね正に。でもこれが運の尽き?でした。

288カムを圧縮11.5に組んでもそれなりには面白そうですが・・・やはり最低12は欲しいですよね。それに288カムにより回す回転数が上がればピストンをはじめ各部の強度が不安です。MSハイコンプはトップを除いてノーマルと一緒。しかもノーマルより重たい。とくると当然B6と共通のノーマルコンロッドに不安が出てきます。回さないなら288カムを組むのは無意味です。せめて8000辺りでピーク、8500まで安心して実用になるようなセットアップをしたいです。

この時期にあの作手オフが有りました。

どうもこうもなく今自分に出来る最高のエンジンを作りたくなって一気に気持ちが加速します(といっても先立つものが無く作業自体は遅々として進まないのですが)。やはり腰下も作ろう、と考え出しました。まずはピストン探しです。MSハイコンプはノーマルボアのワンサイズですからクリアランスは取れません。ちゃんとやりたい・・・ボアがアップしてトップの盛り上がったピストン・・いくつかの候補の中からトップ形状、スカート形状、リセス形状、材質、リングへの信頼性そして価格から、戸田85ファイを選びました。これでボアストロークがスクエアとなります。重量的にも十分に満足できる製品でしたが、やはりノーマルはもちろんMSより重たい。無理して軽く作ろうというところは見受けられず、逆に回転系をそれなりにいじった上で使うように、強度面への信頼性を第一に考えて作られたピストンのような気がします。ショップのチューンドでの使用率が高いのも納得できるつくりです。指定クリアランスは狭く100分の4〜5です。

それはともかくますますコンロッドが不安。コンロッドのトラブルは静的強度の不足による物がほとんどだそうです。もちろんノーマルを使うなら疲労強度を上げるため鏡面等の加工をするところですが、重いピストンを使う以上それだけで良いわけではないでしょう。ノーマルは7200までのマージンしか確保していないわけですから、使う回転数を考えると若干の不安が残ります。街乗りで使う分には問題ないでしょうが、私の車はほとんどサーキットと全開の高速道路でしか使わないのです。そこで思う存分実力を発揮できないことには。

NuMaTeCさんの作ったマシンX(B6)のブローはノーマルコンロッドのクローズインからくるメタルトラブルでしたね。つまりコンロッドの合口の強度不足です。BPは同じコンロッドを使っていて更にピストンが重いですからここを強化できるコンロッドが欲しい・・・が、本当にそんなものが必要なのか?ボルトの強化品、せめてノーマルボルトの新品が出てくるならコンロッドは変更しなかったかも知れません。マツダではボルトの単品販売は無く、コンロッドアッシィでの購入となり、4万くらいの出費になります。ボルトのワンオフも同じくらい掛かるみたいです。

それくらいなら・・・とコンロッド購入を決意しました。これははっきり言って私のエンジンにはオーバークオリティーだと思います。本当はI断面の方がメタルに掛かる荷重の分布が良く、メタルに楽をさせられるそうですが市販の物ではキャリロ製H断面(マルハモータース)しか見つけられませんでした。それでもコンロッドがあることに感謝しなくてはいけませんが。ワンオフで作る、というのにも夢は広がったのですが(そうなるとI型はもちろん、ブラックと同じ構造とされるホンダメタルへの変更や、ロングコンロッド&ショートピンヘッドピストンも可能になりますね)今回は自分の知識の無さから断念しました。もっともHとIの違いなんてこの程度の使用回転数では関係ねー、と言い切って良い気もします。

クランクは割に作りがよいそうです。折損の起きる原因は静的強度不足(座屈)、疲労強度不足やメタルトラブルの結果であるわけですが、チューンドBPでのクランクの折損はメタルトラブルから起きるケースが主に考えられそうです。もちろん他の2つが全くないとは言い切れず、疲労強度や静的強度を上げる方法(ショットピーニングやWPC、高周波焼き入れ、窒化等)についても少しだけですが勉強してみたりもしました。しかし結論として、今回はメタルトラブルを避けることだけを考えることにしました。他の原因は大丈夫起きないよ、そのぶん他に軍資金を回そう、と考えたのです。

メタルに楽をさせるためには、まずブロックのメインジャーナルの受けを強化してやりたいところです。ラダービームは高価すぎて手が出ない・・・そこで活用したいのが最新型BPエンジンのバッフルプレート。これは(今までのBPとは違って、オイルパンとの間に挟まるだけでなく)ブロックのジャーナルキャップにもボルト止めされるのです(キャップには元々ちゃんとねじ穴があります)。同じ役割のプレートを別に作れば?という声もあったのですが、プレートの疲労強度不足による折損を考えると怖くてチャレンジできませんでした。もちろんそのままではつかないので、オイルパンを加工して使用します。さらにメタルを楽にさせようと、クランクのバランス取りを行うことにしました。

メタルも基本的には少しでもトラブル防止につとめたい、+αでフリクション低減による効果も狙ってメタルはブラックメタルを奢ることとしました。もちろんクリアランスも重要です。狭ければオイルの保持量そのものが減り、広すぎれば一定であるオイルポンプの吐出量に対し相対的にオイルの供給量が厳しくなります。また、NuMaTeCさんに指摘されたのですが、どんなにメタルやコンロッドをいじったところでオイルが供給されなければ意味がありません。究極的にはドライサンプですがそこまでは予算が許しませんでした。ここは唯一必要と思いつつも妥協したところです。現実的な方法が無い・・・

#HLAを廃止しているのだから本来HLAのために確保されているほどの油圧は必要なく、リフターとシリンダーが潤滑されさえすれば良いのですから、リフターに行く分のオイルを絞ってやればオイルの落ちに気を使うことも少し減るでしょうし、腰下の潤滑・油圧の確保も少しでも楽になります。実際加工するにはヘッドに上がるオイル量を規制しているブロック上面のオリフィスを絞り、さらにヘッド内での油量・油圧配分を変えるために、リフターシリンダーのオイル穴を絞ることが必要となるので考えただけ、になってしまいましたが。
# 01.05.19.追記 このアイディアはボツ(笑)。理由は GoodSpeedさんのHPクリアランスとジャーナル給油量の関係について を見ていただくと分かりますが、低回転域でも高回転域でもあまりヘッドへの給油量は変化がありません。
ヘッドへの給油量を絞ってしまうと、高回転でのメタルトラブルを回避する以前にカム山の齧りなどヘッド内でのトラブル、部品寿命が心配になりますね。

バルブスプリングはノーマル再利用で行きます。リフターの軽量化と288カムのバルブ加速度の低さから、ノーマルスプリングでも小細工すれば大丈夫ではないか、と踏みました。ロアリングを追加することでイニシャルセット荷重を強めます。トラブルさえ起きなければ柔らかいに越したことはないですしね。
# 01.05.19.追記 最終的にはバルブスプリングはアフター品に交換することにしました。

実際の細かな加工等は「週末の楽しみ」を見ていただくとして、その陰にあるセットアップの考え方は大体こんな感じで推移、決定しました。偉そうに言っている割に結局やっていることは市販されている高いパーツ買って、加工を外注して自分はそれを組むだけかい、と思うと悲しいものが有り、また自分に知識が無い以上誰かのやった実績から推し量ってセットアップするしかなく、結局のところどこのショップでもやっているような定番の仕様になってしまいました。

でもせめて同じ仕様には負けないように、少しでも良い組みが出来るように、また無事エンジンが始動したら良いセッティングが出せるように来春のシェイクダウンに向け今後も頑張っていきます。

この場を借りて、多忙の中様々なアドバイスを下さったhideさん、NuMaTeCさん、HopUp亨さんに心より感謝いたします。有り難うございました(これからもよろしくお願いいたします)

”1928”が完成した暁にはあらためて仕様を一覧で報告します。
その頃にはまた何か変化が有る可能性も...大(笑)

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